問いの違い
通常の因果効果推定は「A は Y を変えるか」を問います。媒介分析はさらに「その効果は M を通るのか、M 以外にも残るのか」を問います。
研究・教育のための因果媒介分析ガイド
曝露が結果に影響するかだけでなく、その効果がどの経路を通るのかを、潜在アウトカム、識別仮定、感度解析、target trial emulation の観点から体系的に学ぶためのページです。
通常の因果効果推定は「A は Y を変えるか」を問います。媒介分析はさらに「その効果は M を通るのか、M 以外にも残るのか」を問います。
直接効果・間接効果の因果解釈には強い仮定が必要です。特に M-Y 交絡、曝露後交絡、交差世界反事実は慎重に扱います。
縦断観察データでは、時点 0、曝露戦略、媒介変数の測定時点、追跡期間を target trial として明示することが解析の土台になります。
Overview
医学・疫学研究では、曝露や介入が疾患リスクを変えるかだけでなく、その作用機序を知りたい場面が多くあります。禁煙が心筋梗塞を減らす効果のうち脂質改善を通る部分はどれくらいか、肝酵素上昇と糖尿病発症の関連のうち HbA1c の悪化を通る部分はどれくらいか、といった問いです。
媒介分析は、総合効果を直接経路と間接経路へ分解しようとする枠組みです。ただし、単に媒介変数を回帰モデルに入れれば因果的な直接効果が得られるわけではありません。時間順序、交絡、識別仮定、効果尺度、感度解析を明示する必要があります。
Conceptual foundation
A、M、Y と交絡因子の関係を区別することが、すべての媒介分析の出発点です。
A を変えたときの Y の全体的な変化。媒介変数 M は調整しません。
M をある基準に固定、または分布として制御したもとで A が Y に与える効果。
A が M を変え、その M の変化を通じて Y が変わる成分。
A の影響を受け、かつ M-Y を交絡する L があると、自然な直接・間接効果の識別は特に難しくなります。
Potential outcomes
古典的な回帰係数の分解を超えて、どの反事実量を比較しているのかを明確にします。
全員が曝露を受けた世界と受けなかった世界を比較します。
M を曝露なしで自然に生じる値に保ったまま A を変える比較です。
A を固定したまま、M が曝露なしの値から曝露ありの値へ変わる比較です。
M を特定の値 m に固定する直接効果です。自然効果より弱い仮定で扱える場合があります。
NDE と NIE には \(Y(1,M(0))\) のように、A=1 のアウトカムと A=0 のもとで生じる媒介変数を組み合わせた量が現れます。これは同一個人で同時に観察できないため、未測定交絡がないことに加えて、交差世界独立のような強い仮定が必要になります。
Interactive explorer
この教育用モデルでは、総合効果を直接経路 \(c'\) と間接経路 \(a \times b\) に分けて表示します。これは線形・単純化された直感用の計算であり、実データの因果推定ではありません。
Target trial emulation
健康診断・レセプトのような縦断観察データでは、曝露、媒介変数、アウトカムが時間の中で変化します。したがって、単純な A-M-Y 図だけでなく、どの時点を time zero とし、どの時点の曝露がどの時点の媒介変数を変え、どの追跡期間のアウトカムを評価するかを明示する必要があります。
Target trial emulation は、適格基準、曝露戦略、割付の模倣、追跡、アウトカム、推定対象を先に書き下すことで、immortal time bias、アウトカム漏洩、曝露後調整などの誤りを減らします。
| TTE 要素 | 媒介分析での問い |
|---|---|
| 適格基準 | 解析開始前にアウトカム既往がなく、必要な測定があるか。 |
| Time zero | A、M、Y の順序が明確になる時点はどこか。 |
| 曝露戦略 | 高 GGT、ALT、AST などをどの閾値・期間で定義するか。 |
| 媒介時点 | HbA1c は曝露後かつアウトカム前に測定されているか。 |
| Estimand | 総合効果、自然効果、介入性効果、または記述的経路係数か。 |
Research workflow
各ステップをクリックすると、実務上の確認点が表示されます。
Assumptions and sensitivity
A-Y、A-M、M-Y の交絡を、事前に測定された C で十分調整できることが必要です。
自然効果では \(Y(a,m)\) と \(M(a^*)\) の独立性が必要になります。曝露後の M-Y 交絡因子があると難しくなります。
各交絡因子の層で、比較したい曝露・媒介状態が十分観察されている必要があります。
M-Y の未測定交絡は特に重要です。VanderWeele 型、Chiba-Suzuki 型など、仮定が崩れた場合の推定値の変化を評価します。
Worked example
このページでは実データ結果を主張せず、研究設計の例として使います。曝露を高 GGT、媒介変数をその後の HbA1c、アウトカムを incident type 2 diabetes とします。問いは「高 GGT の糖尿病リスクへの総合効果のうち、HbA1c 悪化を通る成分はどの程度か」です。
Companion software
This page remains an educational guide to mediation analysis and target trial emulation. The software documentation now lives on a separate TTE Agent page with installation notes, runnable examples, API references, guardrails, and release status.
Learn the causal question, potential-outcome estimands, time ordering, assumptions, and sensitivity analysis.
Try fixed public audit examples, inspect the protocol schema, and review the scientific guardrails before using the package seriously.
The agent supports design, audit, planning, reporting, and guarded integration. It does not replace causal assumptions or investigator judgment.
Terminology
検索またはカードをクリックして、短い説明を確認できます。
References